「あこがれ」
最近、「キングダム」という漫画にどっぷりとハマってます。
休日は、バッグに3冊と財布を詰め込んで出かけてます。
病院の待合室で「ひと読み」。
喫茶店で「ふた読み」。
夕方、焼き鳥屋さんで「み読み」。
これが、ここ最近の休日の過ごし方パターンです。
その日も、焼き鳥屋さんに「み読み」しに行った。
まずは、ささみの燻製を肴に冷や酒を呑む。
カウンターの隣の隣の席には、
文庫本を片手にレモンサワーを飲む美女が...........。
すると、マスターがその美女に、
「何読んでんの?」と一言。
僕と同じ疑問をぶつけてくれた。
「谷崎潤一郎の痴人の愛」です。
冷や酒を吹き出しそうになるのを何とか耐えた。
「あんなキレイな顔して、何とハレンチな.........」。
何事も無かった様に、僕は「キングダム」のページをめくる。
イヤな予感は的中した。
「佐々木さんは今日もキングダム?」
竹串にとり肉を刺しながら、
マスターは目も合わさず僕に聞く。
美女は僕に会釈する訳も無く、
僕の存在は、「今日もキングダム?」
という「いい年してピンクのジャージを着て、ビールも飲まずに、
いきなり冷や酒を呑んで、マンガを読む男」として位置づけされ、
記憶から排除されたのだった。
彼女は黙々とページをめくっていた。
たぶん興奮する場面なのだろう。
僕は勝手に、酷く傷ついた。
そして、マスターを酷く恨んだ。
一言だけ彼女に言い訳したかった。
「読んだら止まらないんじゃ、キングダムは!」って。
僕は焼き鳥屋さんを出て、
その足で「古本屋」に行った。
一番最初に目についた、
「石川啄木詩集 あこがれ」
を手に取り迷う事無くレジに向かった。
なんでも良かったのだ。
マンガでなければ。
初めて読む「石川啄木」には驚かせられた。
題名 沈める鐘
一行目 「渾沌霧なす夢より、暗を地に」
すぐに本を閉じた。
何時代の言葉だよ。
とりあえず、
明日から、バッグに「あこがれ」を一応入れておこう。
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