金曜の夜
いつも通るバーからカップルが出て来ました。
僕のスカウターによると男性は31歳独身、
アパレル関係に勤める少しやりての営業マン。
しかし、後輩からは信頼度が薄い。
女性は28歳独身、佐賀県出身 短大卒業後
百貨店の総合案内一筋 西荻窪在住。
最近、吉祥寺に引っ越そうか悩んでる。
2人は一見恋人の様に見えるが、僕の目は誤摩化せない
元カレ、元カノと言った方が適当だろう。
2年前に「忙しい」を理由に、男から別れを切り出し、
約4年の交際に終わりを告げた。
そう、あれは1週間前の夜。
突然の元カレからの電話に戸惑いつつも、結局は断り切れない
自分にため息を吐きつつ、いつもより化粧には時間をかけた。
男は男で、学生の頃からの友達から「あいつとはどうなってんの?」
という質問から「とっくの昔に別れたよ」と答え、
思い出してしまったのだ。
今の自分を、成長した自分を、見せたくて、
その日の夜には、連絡を取ったに違いない。
2人とも、待ち合わせ時間より早く着き、
昔よく遊んだ下北沢の街を探索し、当時を思い出したはず。
久しぶりに逢った2人は最初こそ照れては見るものの、
当然の様に、話は盛り上がり「あの頃はお互い若かったね」
なんてお決まりの台詞を口にし、
いつもより飲み過ぎたのがプンプン伝わってくる。
そこで、僕に出くわしたのだ。
男は店を出るなり、女のケツをわし掴み。
怒ったフリをする女、しかし目は怒るどころか「少しトロンぎみ」
勝ち誇った様な顔の男、「お前の体は全部知ってるぞ」
そんな声が僕にはしっかりと聞こえた。
体を男にあずけ、もたれかかる女。
僕の存在を無視し、通り過ぎる2人。
振り返る事に耐える佐々木。
そこまで、わずか10秒。
あ〜今夜も妄想は尽きない。
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